きすけろぐ

翻訳者きすけの頭のなか

2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『最後の証人』柚月裕子 ~元検察官の佐方は被告が無罪を主張する裁判の弁護を引き受ける。その裁判の証人によって明かされる真実とは。

『最後の証人』 著者:柚月裕子 発行年:2010年 あらすじ “検事を辞して弁護士に転身した佐方貞人のもとに殺人事件の弁護依頼が舞い込む。ホテルの密室で男女の痴情のもつれが引き起こした刺殺事件。現場の状況証拠などから被告人は有罪が濃厚とされていた。…

『たゆたえども沈まず』原田マハ ~19世紀の終わりのパリ。浮世絵を扱う日本人画商とゴッホや弟のテオとの心の交流。

ゴッホと日本人の心のつながり 『たゆたえども沈まず』 著者:原田マハ 発行年:2017年 あらすじ “誰も知らない、ゴッホの真実。 天才画家フィンセント・ファン・ゴッホと、商才溢れる日本人画商・林忠正。 二人の出会いが、〈世界を変える一枚〉を生んだ。 …

金融翻訳者が取っておくと役に立つ(と思われる)資格

翻訳を仕事にする上で、資格は特に必要はない。 しかし、原稿の背後にある知識がないと、誤訳やミスにつながる。 例えば金融関連の翻訳であれば、銀行や証券会社などの金融機関に務めた経験は貴重な「売り」になるが、業界での勤務経験がなくても、それを補…

『スケルトン・キー』道尾秀介 ~サイコパスを描くダークサイドのサスペンス

児童養護施設で育った僕には、母からスケルトン・キーだけが残されていた… 『スケルトン・キー』 著者:道尾秀介 発行年:2018年 あらすじ “僕に近づいてはいけない。 あなたを殺してしまうから。 週刊誌記者のスクープ獲得の手伝いをしている僕、坂木錠也。…

『傍流の記者』本城雅人 ~新聞記者たちのプライドと出世を描いた「The 男社会」な物語

『傍流の記者』 著者:本城雅人 発行年:2018年 あらすじ “優秀な記者ばかりがそろった黄金世代。しかし、社会部長になれるのはひとりだけだった。生き残っているのは得意分野が違う五人の男。部下の転職や妻との関係、苦悩の種に惑いながら出世レースは佳境…

『ニュー・シネマ・パラダイス』 ~冒頭のテーマ曲だけで涙がでてくる私の all time best

イタリアの田舎町の映画館。トトとアルフレードの友情… あらすじ “シチリア島の小さな村にある映画館・パラダイス座。親の目を盗んではここに通いつめる少年トトは、大の映画好き。やがて映写技師の老人アルフレードと心を通わせるようになり、ますます映画…

『屍人荘の殺人』今村昌弘 ~本格ミステリ好きには評判の第27回鮎川哲也賞受賞作。しかし私には…

『屍人荘の殺人』 著者:今村昌弘 発行年:2017年 あらすじ “神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介は、いわくつきの映画研究会の夏合宿に参加するため、同じ大学の探偵少女、剣崎比留子と共にペンション紫湛荘を訪ねた。合宿一日目の夜、映研のメ…

翻訳作業のスケジュール管理と売上管理

フリーランスで仕事をする上でスケジュール管理は非常に大切な要素であり、それは当然ながら、わたしの様な在宅の実務翻訳者にも当てはまる。 登録している翻訳会社が複数あるので、仕事の依頼が重なることはよくある。 仕事の依頼を受けた時に、自分がどの…

『貘の檻』道尾秀介 <新潮文庫の100冊 2018> ~読み終わった後に暗い地下水路や田舎の景色が頭から抜けていかない闇深いミステリー

新潮文庫の100冊読むぞシリーズ第4弾 『貘の檻』 著者:道尾秀介 発行年:2017年 あらすじ “1年前に離婚した大槇(おおまき)辰男は、息子・俊也(しゅんや)との面会の帰り、かつて故郷のO村に住んでいた曾木美禰子(そぎみねこ)を駅で見かける。32年前、…

翻訳はかっこいい仕事ではない

仕事を尋ねられた時に、在宅のフリーランスで翻訳の仕事をしていると答えると、「かっこいい」とか「優雅だねぇ」などと言われることが多い。 しかし、現実はまったくかっこいいものではなく、納期が迫っている時には何日間も一歩も家から出ることなく、すっ…

『百貨の魔法』村山早紀 ~百貨店を舞台にした人と人とのつながりを柔らかに描いた物語

百貨店で繰り広げられる、人と人との優しいつながり。 『百貨の魔法』 著者:村山早紀 発行年:2017年 発行元:ポプラ社 あらすじ “時代の波に抗しきれず、「閉店が近いのでは?」と噂が飛び交う星野百貨店。エレベーターガール、新人コンシェルジュ、宝飾品…

『危険なビーナス』東野圭吾 ~設定に無理があるような気がしても、それでもいつものように一気読みしてしまう、さすがな東野圭吾作品

あらすじ “弟が失踪した。彼の妻・楓は、明るくしたたかで魅力的な女性だった。楓は夫の失踪の原因を探るため、資産家である弟の家族に近づく。兄である伯朗は楓に頼まれ協力するが、時が経てば経つほど、彼女に惹かれていく。” 出典元:講談社 危険なビーナ…

翻訳ツール”Memsource”を使ってみた

翻訳する際に翻訳支援ツールが使われるようになったのはいつごろからなんだろう。 わたしがまだ翻訳の勉強中のときに、Tradosを導入する人が増えているという記事は目にしていたが、値段も高いし、導入する気は全くなかった。 求人情報で「Tradosを使用」が…

『ジャッジ 裁かれる判事』 ~法廷物だけどそれだけじゃない、父と息子の葛藤を描いた心動かされる作品。

厳格な判事の父と反発する息子、そして裁判にかけられる父… あらすじ ““金で動くやり手弁護士”ハンク。そんな彼にとって弁護士史上最高難度の事件が舞い込む。人々から絶大な信頼を寄せられる判事ジョセフが、殺人事件の容疑者として逮捕。しかも彼は、ハン…

『ブルージャスミン』 ~ウディ・アレンが描く洗練された世界の中でケイト・ブランシェットが巧みに演じる危うい主人公に目が離せない…

危うい精神状態を演じるケイト・ブランシェットに惹かれてしまう… あらすじ “サンフランシスコの空港に美しくエレガントな女性が降り立った。彼女は、かつてニューヨーク・セレブリティ界の花と謳われたジャスミン(ケイト・ブランシェット)。しかし、今や…

翻訳の仕事の見つけ方

翻訳の勉強を続けて、自分の家庭の環境も整って、最初に翻訳の仕事を見つけようと思った時に、求人情報の「翻訳実務経験3年以上」という条件が立ちはだかった。 「経験はないけれど、こんなに実力はあります!」と自分を売り込めるほどの英語力もなく、どう…

『月の上の観覧車』荻原浩 <新潮文庫の100冊 2018> ~それぞれの気持ちが丁寧に描かれた8つの短編集

新潮文庫の100冊読むぞシリーズ第3弾 『月の上の観覧車』 著者:荻原浩 発行年:2011年 あらすじ “閉園後の遊園地。高原に立つ観覧車に乗り込んだ男は月に向かってゆっくりと夜空を上昇していく。いったい何のために? 去来するのは取り戻せぬ過去、甘美な記…

『ツナグ』辻村深月 <新潮文庫の100冊 2018> ~一生に一度だけ、死者と再会できる。私なら、誰を選ぶだろう。

新潮文庫の100冊読むぞシリーズ第2弾 『ツナグ』 著者:辻村深月 発行年:2010年 あらすじ “一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者(ツナグ)」。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親…

『海と毒薬』遠藤周作 <新潮文庫の100冊 2018> ~戦争末期に行われた捕虜に対する生体解剖事件。特殊な環境で起こった特殊な事件なのか。倫理観とは。

夏になると書店で無料配布している新潮文庫の100冊のパンフレット。 www.100satsu.com 本文から1文が抜き出され、短い文章で本が紹介されていて、パラパラ見るのを楽しみにしている。 新潮文庫にこだわっているわけではなくて、角川文庫のカドフェスでも集英…

翻訳の参考になった本 ~日本語の文章の書き方~

英日翻訳をする際に、日本語表記のルールや分かりやすい文章の書き方を知っておくことは非常に大切。 我が家の本棚にある日本語の文章関連の本を3冊ご紹介。 まずは、 『日本語の作文技術』 著者:本多勝一 出版社:朝日新聞出版 【新版】日本語の作文技術 (…

翻訳者の収入

翻訳の仕事に興味を持ち始めた時、翻訳業界の雑誌などでどのくらいの収入が見込めるのか調べてみた。 翻訳を仕事にするようになった今、その時読んでいたような雑誌の同じような特集記事を読んでみても、「平均」とされるデータと比較して、分野や働き方でか…

英文法の勉強(参考書)

大学受験の勉強をしていた頃から、英文法が苦手だった。 文法は勉強すれば得点源!とわかっていながら、どうしても好きになれなくて、文法的にこうだからこうなる、といった理詰めではなく、いつも雰囲気で選択肢を選んだり、文脈から想像して解釈したり。 …

『ツバキ文具店』と『キラキラ共和国』小川糸 ~代書屋を営なむ鳩子の鎌倉での生活を描く、人に優しくなりたいと感じる読んでいて温かくなる物語。

先日、『キラキラ共和国』を読んだので、数年前に読んだ『ツバキ文具店』とともに感想を少し。 『ツバキ文具店』 著者:小川糸 発行年:2016年 発行元:幻冬舎 あらすじ “鎌倉で小さな文具店を営むかたわら、手紙の代書を請け負う鳩子。今日も風変わりな依頼…

『アリスのままで』 ~若年性アルツハイマーに侵されたら、私ならどうするのだろう…

自分のことがわからなくなる、その未来を知った時、わたしなら何をしたいと思うのだろう。 あらすじ “50歳のアリスは、まさに人生の充実期を迎えていた。高名な言語学者として敬われ、ニューヨークのコロンビア大学の教授として、学生たちから絶大な人気を集…

翻訳と英語力

翻訳は、その対象となる言語が喋れるからと言って、仕事として通用するわけではない。 また、TOEICのスコアが高いとか、英検1級を持っているとか、 英語の資格を持っているだけで優れた翻訳ができるわけでもない。 ただ、大前提として、その言語を理解できる…

翻訳者になるまで

小さなころは、「スチュワーデスになりたい!」「婦人警官になりたい!」といった「子供がなりたい職業アンケート」の上位にでてくるような職業に憧れていた。 現実的に翻訳を仕事として意識したのは、結婚してから。 夫の会社は転勤が多く、自分のキャリア…