きすけろぐ

翻訳者きすけの頭のなか

『百貨の魔法』村山早紀 ~百貨店を舞台にした人と人とのつながりを柔らかに描いた物語

 

百貨店で繰り広げられる、人と人との優しいつながり。

 

『百貨の魔法』

著者:村山早紀

発行年:2017年

発行元:ポプラ社

 

あらすじ

“時代の波に抗しきれず、「閉店が近いのでは?」と噂が飛び交う星野百貨店。エレベーターガール、新人コンシェルジュ、宝飾品売り場のフロアマネージャー、テナントのスタッフ、創業者の一族らが、それぞれの立場で街の人びとに愛されてきたデパートを守ろうと、今日も売り場に立ちつづける――。百貨店で働く人たちと館内に住むと噂される「白い猫」が織りなす、魔法のような物語!”

出典元:ポプラ社

 

 

感じたこと

まったく予備知識をもたずに読み始めたが、5ページくらい読んだ時に、「いや、この作者の本、絶対読んでる。何だろう。百貨店が舞台で…」

 

以前読んだ『桜風堂ものがたり』だと、すぐに思い出す。

 

『桜風堂ものがたり』にでてきた書店は、この星野百貨店の中にあった。

 

今回は、星野百貨店に新しくコンシェルジュが置かれることになり、そのコンシェルジュが百貨店の中に優しい新たな風を吹き入れる中、様々な職種、店舗の人の物語が描かれている。

 

『桜風堂ものがたり』の時は、ちょっと話が上手く行き過ぎだろうと思いながらも、書店員の話が面白かった。

 

しかし今回は、話が甘すぎて、出てくる人がみんないい人過ぎて、「話が上手く行き過ぎ」感が前よりもさらに強くて、なかなか入り込めなかった。

 

百貨店というものに対する印象や見方は、きっと世代にとって大きく違うだろうし、舞台が百貨店だからというわけではなさそうだが…。

 

本は読み手の感情や状態で印象が全く違ってくるし、実際に、あまり面白くないと感じた本でも数年後に読み直してみると、今度は夢中になって読んだりすることもある。

 

今回は甘すぎると感じたこの本、違うタイミングで読んだら、もしかしたらその甘さがいいと感じるのかもしれない。

 

自分自身のその受け取り方の変化を感じることも、わたしの読書の楽しみでもある。

 

この本も、数年後にまた開いてみよう。