『月の上の観覧車』荻原浩 <新潮文庫の100冊 2018> ~それぞれの気持ちが丁寧に描かれた8つの短編集
新潮文庫の100冊読むぞシリーズ第3弾
『月の上の観覧車』
著者:荻原浩
発行年:2011年
あらすじ
“閉園後の遊園地。高原に立つ観覧車に乗り込んだ男は月に向かってゆっくりと夜空を上昇していく。いったい何のために? 去来するのは取り戻せぬ過去、甘美な記憶、見据えるべき未来──そして、仄かな、希望。ゴンドラが頂に到った時、男が目にしたものとは。長い道程の果てに訪れた「一瞬の奇跡」を描く表題作のほか、過去/現在の時間を魔術師のように操る作家が贈る、極上の八篇。”
出典元:新潮社
感じたこと
荻原浩は前に『明日の記憶』を読んだことがあり、丁寧に気持ちを描写するんだな、と感じた覚えがある。
今回は8つの短編集。
中でも印象的だったのは、退職する夫の帰りを待ちながら夕食を作り、昔から書き溜めたレシピを見ながらそのレシピにまつわる思い出を振り返る、『レシピ』。
音楽でその時の思い出が一気によみがえることはよくあるけれど、確かに、昔よく作っていた料理とかを思い出すと、その時のことがよみがえってくる!
レシピとその当時の思い出なんて結び付けたことがなかった。
でも、毎日作っている料理でも自分なりの流行り廃りがあって、別に嫌いになったわけじゃないのに全然作らなくなっていたりする。
まだ料理のへたくそだった学生のときに作ったメニュー、こどもが小さかった時にレシピに書き込んだ自分なりのアレンジ。
思い出すだけで懐かしい。
『ゴミ屋敷モノクローム』も、報道される各地のゴミ屋敷には火災の危険があったり近隣住民にとっては深刻な問題で、でも、人が住んでいるということはその人が主役となる物語があって。
その物語の裏の人生にまで創造力を働かせていって、どうにか解決策は見つからないものなのかと考えてみたり。
本を読んで「泣けた!」とか、「感動した!」とかではないけれど、読んだ余韻で自分の昔の気持ちや周りに意識を向けることができた一冊。