きすけろぐ

翻訳者きすけの頭のなか

『ツナグ』辻村深月 <新潮文庫の100冊 2018> ~一生に一度だけ、死者と再会できる。私なら、誰を選ぶだろう。

 

新潮文庫の100冊読むぞシリーズ第2弾

 

『ツナグ』

著者:辻村深月

発行年:2010年

 

 

あらすじ

“一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者(ツナグ)」。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員……ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれの想いをかかえた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連作長編小説。”

出典元:新潮社

 

 

感じたこと

内容について全く知識を持たずに読んでみたが、一気読みしてしまった。

 

辻村深月は、『かがみの孤城』を読んだときにも途中でやめられずに一気読みしたことを覚えている。

 

『ツナグ』では、死者との仲介の依頼者に関する5つのエピソードが描写されているが、その中でもこころに響いたのが『親友の心得』と『待ち人の心得』。

 

高校の演劇部のふたり。

親友だからもちろん互いに惹かれあっていて、近い存在。

でも、それだからこそ、共感に嫉妬が紛れ込む。

親友を死に追いやったのではないかという自責の念とそうではなかったと思いたい、自分を守りたいという気持ち。

 

7年前に失踪した恋人を待っていて、生きていると思いたい気持ちと死んでいるのかもしれないという気持ちが交錯し、ツナグことを希望した男性。

 

他の登場人物もそうだけれど、生きていたらいろんなことがあって、前向きだったり、楽しかったり、つらかったり、醜かったり、たくさんの感情を抱えて人は生きている。

それが丁寧に描かれていると感じた。

 

自分が「ツナグ」ことを頼むとしたら、誰に会いたいだろう。

 

まだ身近な人との別れを経験していないので、いまは思い浮かばない。

だからきっと、本当に使いたい時がくるまで、大事にとっておくだろう。