きすけろぐ

翻訳者きすけの頭のなか

『イノセント・デイズ』早見和真 <新潮文庫の100冊 2018> ~死刑囚となった幸乃は本当に罪を犯していたのか。判決文とともに明かされていく事件の真相とは。

 

新潮文庫の100冊読むぞシリーズ第5弾

 

『イノセント・デイズ』

著者:早見和真

発行年:2014年

 

あらすじ

“殺されたのは三人だった。幸乃の元恋人だった男の妻とまだ一歳の双子の姉妹。なぜあの夜、火は放たれたのか? たったひとり幸乃の無実を信じ、最後まで味方であり続けようとする男。なぜ彼は、幸乃を信じることができるのか? すべてを知らされたときあなたは、真実を受け入れることができるだろうか? 衝撃指数極大値。圧倒的長編。”

出典元:新潮社

 

 

感じたこと

物語は一人の死刑囚に死刑執行命令が下った日の朝を描いて始まる。

 

幸乃が死刑判決を受けた事件の裁判はどのような審議がなされたのか。

そして、その判決文は本当に正しかったのか。

 

幸乃の人生に関わってきた人それぞれが記憶に蓋をして、秘めてきた事実。

その事実が絡み合う中、死刑を穏やかに受け入れる幸乃…

 

一気読み。とても面白かった。

 

事件前と判決後の2部構成になっていて、それぞれの章では裁判所が下した判決文に関連した実際の状況が描かれる。

 

まずその手法が、裁判とは、判決とは本当に正しいのか、という疑問を抱かせながら読み進める形になり、最後まで「事実とは何か」を考えさせる構成になっていて、すごいなと。

 

それぞれの人物のキャラクターもしっかり描かれていて、でも極端ではなく、現実味がある。

 

被害者と加害者の置かれた状況、その事件に至る経緯、実際の証拠、証言は「真実」なのだろうか、裁判は正義を通しているのだろうか。

 

以前、1度裁判の傍聴に行ってから、法廷物の小説などを読むときの感じ方がすごく変化したように思う。

 

実際の法廷を思い浮かべながら読むようになったし、自分が裁判員だったならどうするだろうと深く考えるようになった。

 

人が人を裁くのだから、当然、完全な裁判なんてありえない。

その怖さを、あらためて感じる小説だった。