翻訳ツール”Memsource”を使ってみた
翻訳する際に翻訳支援ツールが使われるようになったのはいつごろからなんだろう。
わたしがまだ翻訳の勉強中のときに、Tradosを導入する人が増えているという記事は目にしていたが、値段も高いし、導入する気は全くなかった。
求人情報で「Tradosを使用」が条件になっているものもよく見られるが、コンピューターやローカライズ分野の場合が多い。
金融分野では目論見書などで使われることもあるようだが、これまで導入しなくても問題はなかったし、全体の訳文を見ながら訳出しないのは逆に質が下がるのではと思ってきた。
翻訳支援ツールは翻訳メモリなどを用いて、繰り返しの文章や過去の訳文との一致率を示して訳文の利用などを行い、効率的で質の高い翻訳を手助けするツール。
機械が自動で翻訳する翻訳ソフトとはまた異なるものだ。
昔は翻訳ツールといえばTradosという感じだったけれど、最近は様々なソフトが利用されている。
かなり前に不惑を過ぎたわたしにとって、新しいものにチャレンジすることへのハードルが非常に高い。
それがパソコン関連となればなおさらで、ソフトウェアのアップデートさえ、そのまま使えるなら変わらなくてもいいのにと思ってしまう。
しかしこのところ、このブログもそうだが、何かに新しいことに挑戦したいと感じていた。
そんな時、非常にいいタイミングで、登録している翻訳会社からMemsourceを利用した案件の依頼があった。
この翻訳会社からは以前、Memsourceの利用についてアンケートを受けていて、翻訳者には金銭的な負担はかからないソフトなので、インストールしてデモデータで練習してみて欲しいといわれていた。
その時にインストールして練習も軽くはしてみたけれど、「基本的には利用しないと思います」と返信していた。
しかし、今回、依頼された案件が通常の金融関連ではなくファッション系の企業内資料で内容が面白そうだったことや、分量がさほど多くなく、納期に余裕があり、試行錯誤するだけの時間が取れそうだったことから、重い腰をようやく上げる時だと決意し受注した。
そして使ってみたら、これがなんと、意外と使える!
マニュアルだけではいまいちよくわからなかったが、Memsourceは使い方の動画をYouTubeにアップロードしていて、それをみればわたしでも大体の流れをつかむことができた。
今回の案件は特に繰り返しが多いわけではなかったけれど、それでも訳語のブレを確認するのに便利だったし、対訳画面だけでなく、きちんと原稿を見ながら作業すれば、普段の訳出とさほど変わらない状態で作業できるし、文章単位の訳抜けは防げる。
普段わたしが受けているような案件に使用して効率や品質が上がるかと言われれば疑問だし、自分で十分に使いこなすことができるようになる自信はない。
けれど、分野が違えば、格段に効率・品質の向上につながることは実感できる。
翻訳ツールを使う案件を敢えて受けようとは思わないけれど、今回、時間をかけながら作業できたことで、Memsourceが条件とされる場合でも不安は(ほぼ)なくなった。
それ以上に、新しいことにチャレンジできた自分が嬉しかったりする。
一歩踏み出す時間が持てる時に依頼が来たタイミングに感謝!