『悟浄出立』万城目学 <新潮文庫の100冊 2018> ~西遊記を悟浄の視点で語る表題作など、中国古典をベースにした短編集。
新潮文庫の100冊読むぞシリーズ第8弾
『悟浄出立』
著者:万城目学
発行年:2014年
あらすじ
“おまえを主人公にしてやろうか! これこそ、万城目学がずっと描きたかった物語――。勇猛な悟空や向こう見ずの八戒の陰に隠れ、力なき傍観者となり果てた身を恥じる悟浄。ともに妖魔に捕えられた日、悟浄は「何も行動せず、何も発言せず」の自分を打ち破るかのように、長らく抱いてきた疑問を八戒に投げかけた……。中国古典の世界を縦横無尽に跳び、人生で最も強烈な“一瞬”を照らす五編。”
出典元:新潮社
感じたこと
表題の『悟浄出立』は『西遊記』がベースなので、場面を想像しながら楽しく読めた。
とはいえ、頭に浮かぶのは子供のころに見たドラマの場面…
猪八戒(西田敏行しか思い浮かばない)が実は名を上げた軍師で、女性問題で天界を追われて地上に落ちる際に誤って豚の胎内に入って豚の妖怪になったなんて、全く知らなかった。
悟浄は岸部シローのあの立ち姿が強烈すぎるし、子供の頃のテレビの影響ってすごいな。
『西遊記』の話自体は子供の頃に児童書で読んだことがあるけれど、大人になった今、岩波文庫とかでもう一度読み返してみたら面白いんじゃないかという気がしてきた。今度チャレンジしてみよう。
他の4編も司馬遷だったり、虞美人だったり、それぞれ中国古典がテーマになっている。この辺も、高校の漢文の授業で読んだようなかすかな記憶がある程度…
万城目学作品は、その不思議ワールドが魅力で、『鹿男あをによし』も『偉大なるしゅららぼん』も『プリンセストヨトミ』も夢中になって読んだ。
でも、この作品は他とはちょっと雰囲気が違う感じ。
歴史物の小説が苦手な私には、いくつかの話は読みにくくて入り込めない部分もあったけれど、それでも『悟浄出立』の面白さだけで読んでよかったなと思える作品だった。