きすけろぐ

翻訳者きすけの頭のなか

『熱帯』森見登美彦 ~マトリョーシカのように幾重にも重なる不思議な話

 

『熱帯』

著者:森見登美彦

発行年:2018年

 

あらすじ

“沈黙読書会で見かけた『熱帯』は、なんとも奇妙な本だった。

謎の解明に勤しむ「学団」に、神出鬼没の「暴夜(アラビヤ)書房」、鍵を握るカードボックスと「部屋の中の部屋」――。

幻の本を追う旅は、いつしか魂の冒険へ!”

出典元:文藝春秋

 

感じたこと

 

読んだ人は誰も最後まで読み切っていない『熱帯』という本を巡る話。

最初は物語の設定がよくわからなくて、どういう話なんだろうと不思議な気持ちが続いた。

 

後半を中心に頭の中がこんがらがりながらも、登場人物を一人一人しっかり考えて自分の頭の中で自由に不思議世界を作り上げていけるのが、ファンタジーを読む醍醐味。

 

森見登美彦作品はいくつか読んでいるけれど、纏っている雰囲気が今回は少し違う気がして、何となく村上春樹の不思議ワールドに近いように感じた。

 

この話の中で鍵となり続けている『千一夜物語』、実はその成り立ちも内容もよく知らなかったこと自体に初めて気づいた。

 

アラジンの話が載っている物語集くらいにしか思っていなかったのに、実はとっても奥が深そう。