きすけろぐ

翻訳者きすけの頭のなか

『何者』 朝井リョウ <新潮文庫の100冊> ~就活生のリアルな感情のゆらめきが描かれ、読んでいて苦しさを感じる作品

 

新潮文庫の100冊読むぞシリーズ第14弾

 

『何者』

著者:朝井リョウ

発行年:2012年

 

あらすじ

“就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。”

出典元:新潮社

感じたこと

出版当時に読んでいたけれど、新潮文庫の100冊読むぞシリーズとして、今回再読。

 

前回読んだ時に、登場人物たちの抱えた感情があまりにも苦しかったのを鮮明に覚えている。

そして今回も。

 

自分が就活していた時はTwitterもなく、最近の状況とはまるで違っているけれど、社会にでていく最初のステップで自己否定をされる怖さや辛さは同じように感じていた。

 

就職しないという選択肢だってある。でもその選択肢を選ぶにしても、そこにたどり着くまでに自分がどう生きていくのか、自分はどのような人間なのか、何がしたいのか、などを問い続けなければならない。

 

妬みという感情は程度こそあれ誰もが持っていて、だからこそ、登場人物たちの持つ薄暗い思いに自分を重ねて苦しくなるのだと思う。

 

数年前に就活生を主人公にした東京ガスのCMがあまりにもリアルすぎて辛いと話題になったけれど、絶対的な理由がわからないのに自分が否定されたように感じてしまう状況は精神的にかなりの圧力となる。

 

自分が就活生だったら読むのがきつ過ぎると感じるくらい、心に響いた作品だった。