『地球星人』村田沙耶香 ~魔法少女である私の生きている世界は人間工場なのか。
『地球星人』
著者:村田沙耶香
発行年:2018年
あらすじ
“地球では「恋愛」がどんなに素晴らしいか、若い女はセックスをしてその末に人間を生産することがどんなに素敵なことか、力をこめて宣伝している。地球星人が繁殖するためにこの仕組みを作りあげたのだろう。私はどうやって生き延びればいいのだろう――。芥川賞受賞作『コンビニ人間』をはるかに超える衝撃の受賞第一作。”
出典元:新潮社
感じたこと
読み終わった後に、その話の流れに何とも言えぬ感情が沸き上がる。
『コンビニ人間』の時も思ったけれど、村田沙耶香作品は読みやすい。まわりからみたら少しいびつで世間からはみ出ているように思える主人公を、自分がまるでその主人公であるかのように体験できる。
子供時代の出来事を経て、由宇と再会する場面はどうなるのかドキドキした。
作者のインタビューを読むと、少女時代を書いてそれで完結させるはずだったが、大人時代も書きたくなってそのまま描き続けたという。少女時代と大人時代の雰囲気が違うのはそういうわけだったのかと納得。
この主人公は自分を「魔法少女」であり地球星人とは違っていると考えている。『コンビニ人間』の主人公と同じように、程度こそあれ、人間が誰しも感じるであろう自分と世の中との「ずれ」を描いている。
普通って何。普通じゃないって何。普通なんてない。
その部分が、自分と重なり、話に引きこまれる要因のひとつになっているのかもしれない。
少し西加奈子の作品につながるような、そんな雰囲気があるように思う。
また違う作品が読みたい。