『ペインレス』天童荒太 ~人間にとって痛みとはどのような意味を持つのか。
『ペインレス』
著者:天童荒太
発行年:2018年
あらすじ
“身体の痛みを喪った青年は、その麻酔科女医にとって舌なめずりするような実験材料だった。他者への共感を生来持てなかった彼女は、快楽の在処を確かめるようなセックスの果てに何を企てようというのか。人類の倫理とDNAを決壊させる、構想20年の長編小説。”
出典元:新潮社
感じたこと
身体的な痛み、精神的な痛み。
人間にとって痛みは辛く、避けたいもの。
ほんの小さな火傷でも、その痛みはストレスになる。
先天性無痛症については、以前、久坂部羊の『無痛』を読んだ時に興味を持って少し調べたことがあったけれど、『ペインレス』の中で描かれている精神的な痛みを感じないという観点は今までに考えたことがなく、新鮮だった。
人に共感する、人の痛みが分かる、というのは、身体的な痛みが自分の体を守るためにあるのと同様、自分の精神面を守るための壁になっているのかもしれない。
そこが欠けていると、知らず知らずに自分が傷つき、追い詰められていく可能性がある。
天童荒太の今までの作品とはちょっと違う印象を受けるのは、主人公のキャラクター設定が今までにない感じだからだろうか。
自分が知らない世界、自分が想像したこともなかった世界に生きる主人公の気持ちを考える、そういう小説らしい楽しみ方ができる作品だった。