『ひと』 小野寺史宜 ~ひとのぬくもりを感じて生きていく
『ひと』
著者: 小野寺史宜
発行年:2018年
あらすじ
“母の故郷の鳥取で店を開くも失敗、交通事故死した調理師だった父。
女手ひとつ、学食で働きながら一人っ子の僕を東京の私大に進ませてくれた母。
──その母が急死した。
柏木聖輔は二十歳の秋、たった一人になった。
全財産は百五十万円、奨学金を返せる自信はなく、大学は中退。
仕事を探さなければと思いつつ、動き出せない日々が続いた。
そんなある日の午後、空腹に負けて吸い寄せられた商店街の惣菜屋で、買おうとしていた最後に残った五十円のコロッケを見知らぬお婆さんに譲った。
それが運命を変えるとも知らずに……。”
出典元:祥伝社
感じたこと
両親が亡くなってひとりになってしまうという辛い状況から始まってはいるものの、話のなかで特別に大きな事件が起こるわけではない。
アルバイトをしながら、ひとの温かさや身勝手さを感じ、親の歴史をたどって自分について考える。
穏やかで素直な主人公が、社会に触れながら、成長していく。
「ひと」というタイトルが、単純なのに内容をきちんと表しているところがすごい。
文体もとても読みやすく、心がじわっと温まる話だった。