『砂の女』安部公房 <新潮文庫の100冊> ~昆虫採集に行った先で泊めてもらった民家は砂穴の底にあった
新潮文庫の100冊読むぞシリーズ第25弾
『砂の女』
著者:安部公房
発行年:1981年
あらすじ
“砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。”
出典元:新潮社
感じたこと
安部公房ってもっと古い人かと思っていた。
いわゆる純文学はとっつきにくさがあって読み進めるのに時間がかかるので、なかなか読む機会がないのだけれど、この『砂の女』は違った。
主人公の動きが気になって、一気に読めた。
場面を想像しながら読んでも、砂に囲まれた朽ちかけた家の中だけで、その状況からほとんど変化なしで話が進んでいくのに、ここまで読み手を離さないのはすごい。
砂の中に埋もれた中でなんとか脱出しようとして、その中で精神的に追い詰められて、女との関係性も変わってきて…という主人公の気持ちの変化が、実は普段の生活で会社や人間関係に苦しんでいる人とそんなに変わらないんじゃないかと思えた。
自由になりたいと思いながらもがき、手に入らないことでさらに想いが募り、そして手に入った時には気持ちに変化が生じている。
今度は『壁』とか『他人の顔』とかも読んでみよう。